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『板本尊偽作論』 安永弁哲著1956(昭和31)年 初版 多磨書房刊
『板本尊偽作論』覆刻版 安永弁哲著1989(平成元)年 初版 鹿砦社刊※販促チラシ付き
この2冊、とにかく誤植が多いです。こんな本はまれにしか見ません。もともと原本と復刻版に違いがあるかどうかを確認しながら読み進めていたのですが、あまりに誤植が多いので、(素人ですが)校正するつもりで、違いのある箇所を表にまとめました。一通り読んだだけですので見落としはあるかもしれません。
400箇所強の「(送り仮名含む)仮名遣いの現代化」以外では、復刻版にする時に元々の誤植を訂正した箇所が45箇所、訂正されなかった誤植が24箇所、新たに誤植を生んでしまった箇所が約130箇所ありました(概要は後述します)。
また、原本と復刻版の違いは、以下の通りです。原本には大石寺御本尊、妙海寺御本尊の両方の写真がある(復刻版は大石寺のみ)。復刻版には、以下の記事が追加されている。中杉弘氏による「プロローグ」(12頁分の導入文)原著者による「冒頭に一言」(6頁分の断り書き)原著者による「附録三・『週刊現代』所載「池田・大森対談」を読んで」(8頁分の論考)原著者による「あとがき」(7頁分、妙観講が多勢で著者事務所に押し寄せ挑発行為をしてきた顛末の記載あり)(違いではありませんが)原本出版後の名誉毀損裁判により「水谷日昇管長の巻」を削除する事で和解したが、覆刻版では特に削除せずそのまま再掲されている(復刻版の「冒頭に一言」にそう書いてあります)。
『悪書板本尊偽作論を粉砕す』覆刻版 日蓮正宗布教会編1956(昭和31)年 初版 (発行人:日蓮正宗布教会、代表:細井精道(日達)、印刷者:浅井甚兵衛)
の覆刻版(平成15年)限定100部、非売品, 古書店の書店票あり
こちらは『板本尊偽作論』に対する、日蓮正宗からの反論書です。「日蓮正宗布教会」編でその代表が「細井精道」(大石寺第66代・細井日達管長)師なので、細井日達師の記述かと思う(犀角独歩氏のブログにもそうあります)のですが、法華仏教研究会発起人の東佑介氏は、『宗教問題』No.12でさらっと「この文意について大石寺第六十五代・堀米日淳は『悪書板本尊偽作論を粉砕す』において次のように解している。」(p.128)と書いているので、日淳師の記述なのかもしれません。読んでみるとそのような気もしてきますが、確かな根拠は知りません。
『板本尊偽作論』原本・復刻版での誤植について
たとえば、原本で「日正蓮宗」とあって覆刻版で「日蓮正宗」と直してあるようなものが45箇所、
その他に、イエスズ会(正しくは「イエズス会」)」「景勝ノ地(御遺文、正しくは「最勝ノ地」)」「日蓮宗々務院」と言うべきところを「日蓮正宗々務院」としているなど、復刻版でも訂正されなかった箇所が24箇所、
原本では正しかったのに、覆刻版で誤植になったもの…たとえば、「竜の口」を「滝の口」「血脈相承」を「血脈総承」「尾行」を「備考」「筆にも出来ぬ」を「筆にも出来る」「日蓮宗」を「日蓮正宗」「違ったものであるから」を「違ったものであるが」(本論として超重要箇所が意味不明に…)「左は尖って」を「左に尖って」(「経」の字、超重要箇所)等が約130箇所(軽微なものは102箇所、重要箇所は27箇所)ありました。
また復刻版では、中杉弘氏による「プロローグ」には、特に誤りはありませんでしたが、安永弁哲氏の「あとがき」では「要法寺」とすべきところを「要本寺」となっていたりしますので、この間違いの多さは編集者・出版社のみならず著者の特性にもよるものかと思われました(※個人の感想です)。
ただ、板本尊偽作論の本論になるにつれ誤植・誤りが減っていき、「経」の字あたりではほぼ無くなるので、著者の力のかけ具合がそのあたりにも表れているかもしれません。また「付録一、小樽法論を批判する」(原本で全25頁)には、原本側には一切誤植も誤りもなく、この本の中で唯一、品質の高いものでした。それゆえか、説得力も感じます。ただ残念な事に、復刻版では誤植が多数発生しています。
それぞれの書籍のよろしくお願いいたします。
(2021年 6月 21日 5時 45分 追加)
ちなみに原本の方は、先日、神田の古書店街で同じものを一冊見かけましたけれども、それよりはこちらの方がかなり状態が良いです。パラフィン紙がついてますし、私が購入した時点で和紙に包んで保管してありました。